1000HIT THANKS!
戦 *セン*
最近はモデルとして有名になってきたナカは、廊下を歩いているだけでも目立つ。
大概はボーッとしているが、男子生徒にはそんな表情も神秘的で憧れの的のようである。
今も、別にこれといった用事もないが、歩いているだけであった。
「蕪木さん。ちょっといい?」
「?はあ…」
もちろん女子からの憧れの的でもあるがそれは一部だ。
少なからず、ナカに嫉妬の念を抱く者たちもあった。
梶原生徒会長の彼女として。
「…梶原様とは、本当に付き合ってるの?」
「まあ…そんなところです」
実際付き合っているからといってウミと甘い言葉ばかり交わしているわけではないし、ウミの蹴りなどが無くなったわけではない。
ただ、足りない言葉を埋めて確実に気持ちは繋がっていると確認し、安心できるだけなのだ。
「梶原様はあなたのことすきなの?」
女生徒の視線がナカに突き刺さる。
本気でウミのことを想っていることを伝えてくる、そんな目だった。
「多分…そうだと思いますが」
「多分って…?
それなのによく付き合っていられますね」
先程の視線といい、ただの梶原会とは違う人物であるようだ。
ナカを見ている目に陰りがある。
「あなたも、それで梶原様のことすきなんですか?
そんな、曖昧な態度ばかりで…っ」
さすがのナカも、もう黙ってばかりはいられなくなった。
ウミの気持ちについてはやはり本人ではないので上手く答えられなかったが、自分の気持ちまで疑われてウミとの仲を軽く見られるのには我慢ならない。
それは同時にウミのことも軽く見られているように感じたからだ。
「わたしは…っちゃちゃ、ちゃんとウ、梶原くんのことが、すきです!
この気持ちだけは本物だから、わたしは…梶原くんと付き合ってるんだ。
この気持ちだけは…もし、どんな戦いになっても負けないっ!」
戦い。
まさに今、とても小規模だけどとても大切な一戦を迎えているように思えてきた。
今まで、たくさんのアクシデントや戦いに直面してきた。
乗り越えてきた。
しかし、それは全てウミがいなければかなわなかったことであった。
だが、これだけは。
この戦いだけは一人で。
ウミがいなくても自分の気持ちだけは真っすぐに保って、戦えるように。
ナカはじっ、と女生徒の瞳を見据えていた。
すると急に女生徒はハッと目を見開いて、どこかへ行ってしまった。
その後ろ姿はなんだか泣いているようにさえ見えた。
「大丈夫かよ」
「えっ、わっ、ウミ!?」
先程の女生徒はナカの背後に立っていたウミを見たのだ。
だからか…、と理由を悟ってウミを見上げる。
「またなんか言われたのかよクソモデル」
こんな場面でも照れ隠しのように悪態をつく。
「なっ…、なんか、ウミとわたしが本当に付き合ってるかって…」
「はあ?」
「あと、ウミがちゃんとわたしのことすきなのかって…」
ナカの心に一番深く残った一言。
そうであるはずなのに、自信をもって言えなかった一言である。
「おまえはなんて答えたんだよ」
「多分…って」
「バカじゃねーの」
「わっ」
そう言ってナカの頭に両腕をのせて体重をかける。
ナカは急に下しか見えなくなり慌てて手足を暴れさせてみる。
「っ…な、ウミ」
「よく聞けバカ。
てめーみてーなクソモデルとすきじゃなくて誰が付き合うかってんだ。
そんくらい余裕もって言え」
今度はウミの顎までもがてっぺんに押し付けられて、ウミの顔は完全に見えなくなってしまう。
「ウミ…顔見たいよ」
「調子のんな」
顔を見なくても分かる。ナカにはそんな気がしていた。
触れ合った身体から伝わってくるウミの本気。
それを感じているうちにナカ自身の身体も幸せに震えるようだ。
「あのね」
「なんだよ」
「ちゃんと、わたしはウミのことがすきで、これは負けられないとかは言ったよ」
ウミは身体を離すかどうかで葛藤していた。
今のナカの表情は見たいが、自分の余裕のない姿は見せたくない。
鏡なんかなくても、自分の頭に集まってゆく熱で分かる。
すると、背中にやわらかな感触。
「ウミ!わたしどんな子にもウミへの気持ちだけは負けない自信あるよ」
背中に回された腕のおかげでまた少しナカを感じる。
ウミは結局ナカの頭から腕を離し、見上げたナカの真剣で、少し頬が赤みがさした顔を見た。
また目を合わせられなくなり、ウミはその細い腰を抱き寄せ、長い髪に指をからませた。
負ける気はしない。
この気持ちなら…
fin.
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あとがき。
お礼SSです。
1000HITはウミナカだったので2000HITはなつみかんですね☆
悩殺本編ではウミさまのライバル(?)ばっかり出てくるのでナカぴょんにも…笑
ナカぴょんはかなり強い子だと思います!
written by..澪